どんなストーリーも連れていくよ
02 骨と骨つないでたどるゆるやかにともにこわれてゆく約束を

 人を抱いているというよりは骨に触れている。
 彼の太腿を支えて持ち上げるときに、そんな心地は特に強くなる。人体の芯になる位置だ。彼の身体は細いくせしてそういう部分は存外つくりがしっかりとしている。
「終わらなかったらいい」
 こぼれて落ちたその音がよく聞こえなかったから動きを止める。薄い皮膚を隔てて関節がある。その膝を撫でながら先程なにを呟いたのかを尋ねる。千の呼吸は相変わらず静かで、こんなにも溢れている闇を少しも乱したりはしない。
「僕らがここに閉じ込められたらいい。そしたらもう、終わらない」
「お前は」
 なめらかに彼の腿が自分の脇腹を撫でて布団に着地する。身を起こそうとするので手を引いてやる。
「帰る場所があるからここに来れるんだよ。それはお前にとってもう十分失くせないものだろ」
 肌がかろうじて掠らない、密着するよりも近い距離で彼は息を吐く。
「だからここにいたい」
 抱きつかれて胸板に耳を寄せられる。そうされると聞こえないくらいかすかだったはずの呼吸や鼓動が俺にもよく聞こえるようになる。
「それを放り出してここにいてほしいって、万がそう思ってるから、それなら僕が叶えたいから、ここにいたい」
「思ってない。らしくもない勘違いだな」
 しみったれた体温をさっさと引き剥がしてあからさまに呆れる。ロマンチックに酩酊するような相手ならむしろ彼の相方の方が適任だろう。
「言っておくけどもちろん俺にだって帰る場所があるよ。壊すつもりもない」
「じゃあなんでこんな所にいるんだろうね」
 乱れた鼓動がざらついた温度で身体を響かせる。不快に思っていることごと悟られたくなくてそのまま押し倒した。
「ねえ、万。僕のせいにしたいならそれでいい。いくらでもしたらいいよ、でも」
「何、もう挿れていい?」
「……うん」
 また来てもいい、と彼は囁いて尋ねる。何を今更と返すと淡い微笑を残像にまた千は首へ腕を巻きつけて抱きついてくる。
「何回だってこうしようよ」
「しつこいな、今日は……」
 どうしてだろうか。自分が少しずつ欠けていくような錯覚を覚えるのだ。こいつの中に入ると、いつも俺は。