05 やわらかく脈打つからだここにあるすべてのものを消して なのはな 抱えていた身体が滅びるように柔らかく力を失って寝台にくずおれる。好きだった瞬間だ。今はもう、どう扱えばいいのか答えが見つからず途方に暮れてしまうくらいに。 「こんなときなのに」 オレを見上げようと寝返りを打とうとする。その視線を避けるように隣に身体を倒す。オレは言葉の続きをそれ以上は編まない。本当は何も暴きたくなんてない。なるべく長い時間、泡立つ熱にふたりで浮かされていたかった。そうしていればたったさっきまで雨の匂いの中で願っていた通りになかったことになるようなそんな気がしていた。 何がって聞かれるなら、何もかもだ。 「こんなときでも気持ちいいよ」 ユキが言葉の続きを引き継ぐ。オレが拒んだから背中しか見せないこの人が本当に何もわかっていないなら、そのせいでオレが朽ちるだけならそれは彼の罪にはならない。でもユキは、オレに優しくしようとするのだ。 「もう一回しようよ」 背骨を撫でたってびくともしないこのひとがそうオレに持ちかける。あの公園でしてくれたみたいに抱きしめてほしいとねだればおそらくそうしてくれるのだろう。少なくともオレはそう信じられている。ここ数日頭を絶えず荒らしていた砂嵐のような落胆がとうとう凪いでいくのは、オレがこのひとにそうやって愛されているからなのだろう。そう信じたいと告げれば迷わずそうだよと頷いてくれるこのひとのおかげなのだろう。 それが真実なのかどうか確かめることはオレにとっての絶望だった。だから物言わずに抱きしめる。彼の即物的な願いを今はただ叶えてやることで、オレがオレを救える位置にしがみつくために。それが腐った杖を支えに立つように愚かなことだと、今だけはその事実から目を逸らすために。 2025/06/11(Wed)
抱えていた身体が滅びるように柔らかく力を失って寝台にくずおれる。好きだった瞬間だ。今はもう、どう扱えばいいのか答えが見つからず途方に暮れてしまうくらいに。
「こんなときなのに」
オレを見上げようと寝返りを打とうとする。その視線を避けるように隣に身体を倒す。オレは言葉の続きをそれ以上は編まない。本当は何も暴きたくなんてない。なるべく長い時間、泡立つ熱にふたりで浮かされていたかった。そうしていればたったさっきまで雨の匂いの中で願っていた通りになかったことになるようなそんな気がしていた。
何がって聞かれるなら、何もかもだ。
「こんなときでも気持ちいいよ」
ユキが言葉の続きを引き継ぐ。オレが拒んだから背中しか見せないこの人が本当に何もわかっていないなら、そのせいでオレが朽ちるだけならそれは彼の罪にはならない。でもユキは、オレに優しくしようとするのだ。
「もう一回しようよ」
背骨を撫でたってびくともしないこのひとがそうオレに持ちかける。あの公園でしてくれたみたいに抱きしめてほしいとねだればおそらくそうしてくれるのだろう。少なくともオレはそう信じられている。ここ数日頭を絶えず荒らしていた砂嵐のような落胆がとうとう凪いでいくのは、オレがこのひとにそうやって愛されているからなのだろう。そう信じたいと告げれば迷わずそうだよと頷いてくれるこのひとのおかげなのだろう。
それが真実なのかどうか確かめることはオレにとっての絶望だった。だから物言わずに抱きしめる。彼の即物的な願いを今はただ叶えてやることで、オレがオレを救える位置にしがみつくために。それが腐った杖を支えに立つように愚かなことだと、今だけはその事実から目を逸らすために。